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ホテルづくりは、やることが多すぎる
この記事の読者は、ホテル開業の旅の途中で少し立ち止まったところか、地図を広げたばかりかもしれません。少しだけ休憩がてら、読み進めてみてください。
ホテルの開業やリブランディングはやらなければならないことがたくさんあります。ブランドのネーミングから始まり、建物の外観や空間のクリエティブ・食事やアクティビティ・宿泊と、あまりにもやることが多い上に、何度も事業収支計算をやり直しているのではないでしょうか。各セクションが知恵を絞り出して、「こーじゃないか」「あーじゃないか」と議論を日々重ねていることでしょう。そして、この考える時間がホテルや旅館を作っている上で、最も楽しい時間なのだとも思います。
さて、経営者・事業責任者の視点ではどうでしょうか。融資・設計変更・施工業者の選定・採用・行政の対応・法令の遵守などなど、華やかな仕事よりも決めることがあまりにも多すぎて疲れている方も多いのではないでしょうか。
シェフも、サウナも、まだ決めなくてよい


結論からお話します。
ホテルづくりで、最初に決めるべきことは一つしかありません。それは「顧客やチームメンバーに対する約束」です。
「誰に何を約束するホテル、旅館なのか」を決めずに手段ばかりを先行してしまうと、軌道修正が増え、想定しなかった追加投資も増えていくことになります。この「顧客やチームメンバーに対する約束」を決める前に、「一流のシェフをいれよう!客室には最高のサウナを設置しよう!流行りのオールインクルーシブだ!」と息巻いてはいないでしょうか。一流のシェフも、最高のサウナも、オールインクルーシブも、どれも魅力的な選択肢です。しかし、それらはあくまで目的ではなく、約束を形にするための手段であると考えています。「目的」と「手段」が入れ替わった瞬間に、ホテルづくりは少しずつブレが生じ始めます。
「体験なのか」「静けさなのか」「地域や文化との出会いなのか」など、遠路はるばる訪れたお客様が、「あなたのホテルの何に魅力を感じて選んだのか」を想像してみてはいかがでしょうか。
お客様は、何を選んでいるのか
2013年のインバウンド転換期から、ホテル市場の需要高騰による建設ラッシュが続いていました。しかし、2020年のコロナ流行の前と後では、戦う世界が大きく変わったといえます。ホテル市場は「需要があった時代」から「選ばれる理由が問われる時代」へと変化しました。
需要がある時代は、ある程度「市場」が選んでくれました。しかし、今は違います。需要よりも供給が多くなった時代において、お客様には無数の選択肢が存在します。だからこそ、比較されます。比較されたときに初めて、「この宿は誰のための宿なのか」が問われるわけです。
お客様はシェフやサウナを比較しているわけではありません。無意識のうちに、「この宿でどんな時間を過ごせるのか」「自分に合う場所なのか」を比較します。特にインバウンドのお客様は、その土地の歴史や文化、ホテルのコンセプトに隠された背景をとても大切にします。
つまり、比較されているものは設備ではなく、そのホテルが提供する価値そのものなのです。
あなたのホテルは、何を約束するのか
だからこそ、ホテルづくりの最初に決めるべきことは設備ではありません。「誰に、どんな時間を届ける宿なのか」「何を期待して来てもらい、何を持ち帰ってもらうのか」この約束が、すべての意思決定の基準となります。
約束が決まると、不思議なくらいに今までの迷いが減ります。「一流シェフを迎えるべきか?サウナを設けるべきか?オールインクルーシブにするべきか?」と、その答えは”世の中の流行り”ではなく、「約束を実現するために必要かどうか」で判断できるようになります。そうすると、お客様だけではなく、チームメンバーの迷いも消え、みんなが同じゴールを見るようになります。
- 約束が決まる。
- だから、ターゲットが決まる。
- だから、商品が決まる。
- だから、空間が決まる。
- だから、採用する人材も決まる。
Webサイトは「最後に」その約束を伝え、発信していく土台となっていきます。


冒頭でもお話してきましたが、ホテルづくりは決めることがたくさんあります。
決め事を行う最中にいくつもの迷いが生じることもあるかと思います。そのたびに、立ち返る「約束」があるかどうかで、その後の意思決定は大きく変わってきます。ターゲットも、商品も、空間も、採用も、そして最後につくるWebサイトも、すべてはその「約束」を形にするための手段なのです。
私たちは、着工の2年前からホテルプロジェクトの構想段階に携わってきました。ホテルづくりの苦悩をよく知っています。そして、迷ったときに立ち返る「お客様やチームメンバーに対する約束」が、初期段階で設定されていることがいかに大事なことか。私たちは身を持って、その貴重な経験から学びました。
それは決して、テンプレートのヒアリングシートに記載していくだけで解決するものではありません。何度も何度も会話をして、組み立てていくものなのです。あなたの中にある想いは、しっかりと言葉にして、形にしていく必要があります。
もし今、開業やリブランディングという旅の途中で迷っているのであれば、一度立ち止まって考えてみてほしいです。
あなたのホテルは、誰に、何を約束するホテルなのでしょうか。
私たちは、Webサイトをつくる前の、この「約束」を一緒に考える時間にこそ価値があると考えています。