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「会社の説明がスタッフによってバラバラ」「資料をつくるたびに言い回しが変わる」。
こうした言葉のズレは、積み重なると社内の確認や修正を増やし、あらゆる場面で合意形成に時間がかかる原因になります。
このズレを根本から解消するのが、コーポレートアイデンティティ(以下、CI)です。CIは単なる「理念」や「スローガン」ではなく、会社として何を大事にし、どう判断するかを揃えるための「共通言語」になります。
迷ったときに戻れる「判断基準」
たとえば、社内で「うちは挑戦的だ」と言う人もいれば、「堅実さが強みだ」と言う人もいる。このままだと、Webや採用の発信で伝え方が揃わず、会議のたびに「結局どっちなのか」という迷いが生まれます。
その結果、デザインや文章をつくるたびに「なんか違う」というやり直しが増えてしまいます。
私たちクリップは、CIを「綺麗な言葉を並べること」ではなく、迷ったときに立ち返り、議論を「好み」から「方針」へ戻すための判断基準だと捉えています。
判断の基準になる軸をどう整理するか
判断基準は、長文である必要はありません。むしろ長いほど現場では使われず、記憶からも薄れてしまいます。クリップでは、必要最小限の軸として「PMVV」の4要素で整理することがあります。
Purpose(存在意義):大きな意思決定で迷ったときの基準
Mission(果たす役割):日々の優先順位で迷ったときの基準
Vision(目指す姿):中長期の方向性で迷ったときの基準
Value(価値観・行動基準):現場の振る舞いで迷ったときの基準
PMVVは、きれいに言語化すること自体が目的ではありません。
自社サイトで何を一番に伝えるか、採用でどんな人に来てほしいか。こうした答えの出にくい場面で「うちの会社なら、こう考える」と同じページを開けるようにすることが、CIの本当の役割です。
言葉が固まる前に「見た目」を決めない
早く形にしたい気持ちは自然ですが、土台となる言葉が曖昧なままだと、見た目の判断も「好み」に寄りやすくなり、次のようなことが起きやすくなります。
・デザインの方向性が日によって変わる
・「なんか違う」といった曖昧な修正が続き、決めきれない
・決裁者のコメントが「感想ベース」になりやすい
見た目は、会社が大事にすること(=PMVV)を伝えるための「手段」です。
だからこそ、クリップでは「言葉(CI)」を固めてから「見た目(VI)」へつなげる順番を大切にしています。この基準があるだけで、ものごとを決めるスピードは格段に上がります。
※ビジュアルアイデンティティ(VI)については、別記事で詳しくまとめています。
CIは「ブランド戦略」の流れで整える
クリップでは、CIを単独で作るのではなく、ブランド戦略の一連の流れの中で「言葉を揃える工程」として扱います。「誰に/何を約束し/なぜ自社なのか」という戦略の根幹と結びついていないと言葉が浮いてしまい、現場で使われない形だけのものになりやすいからです。
参考として、クリップのブランド戦略は次の6ステップで進めていきます。
ブランド戦略策定のフロー
①現状を整理し、そろえる(顧客・市場・自社の前提をそろえる)
②ターゲットを決める(誰の、どんな状況に向けるか)
③約束を決める(届ける価値・体験を定義する)
④違いを決める(なぜ他社ではなく「自社」なのか)
⑤言葉にする ★ここ(短く、ぶれない形に整える)
⑥ブランディングへ反映する(Web・資料・発信・体験に反映する)
この中でCI(PMVV)を整えるのは、会社の考えを言葉として揃える「⑤言葉にする」の工程です。
ここで大切にしているのは、⑤だけを切り出して進めないことです。
ターゲット(②)や提供価値(③)、他社との違い(④)といった材料を丁寧に揃え、その「器」として⑤の言葉を紡ぎ出す。そこまで含めて、実務として機能するCIの策定だと考えています。
いきなり言葉をつくるのではなく、しっかりと「材料」を揃えてから言語化することで、現場で迷いが出たときに「あ、このターゲットに向けた言葉だから、この表現なんだ」と納得感を持って立ち返ることができる、生きたPMVVを策定していきます。
CIを策定するタイミング
「今の言い方では説明が揃わない」と感じたときや、現場で判断が割れ始めたときに、CIは必要になります。
・説明が人によって違う:同じ質問に対して、部署ごとに答えが変わる
・発信が止まる:Webサイトや資料の言い回しに毎回迷う
・見た目の議論が進まない:「なんとなく違う」といった曖昧な意見が続き、決めきれない
・新しいことを始めたい:新サービスや新市場に向けて、軸を言葉にする必要が出てきた
また、CIは一度つくって終わりではありません。会社が変われば、言葉も見直しが必要になります。
・事業が増えた:何をする会社かを、一言で説明しづらくなった
・ターゲットが変わった:以前の言い方が響かなくなった
・組織が拡大した:判断が割れやすくなり、手戻りが増えた
・統合やブランド追加があった:会社としての軸が見えにくくなった
こうした状況が出てきたときは、見た目を整える前に、PMVVを「判断の基準」として揃えておくことが重要です。
そうすることで、発信や判断のぶれを防ぎやすくなります。
補足:見落としがちな「権利」のリスク管理
最後に、ネーミング(社名やブランド名)で欠かせない「権利」の話にも触れておきます。
せっかく言葉やコンセプトが固まっても、その名前が他社に商標登録されていれば、その後の発信や制作はすべて止まってしまうからです。
そのため、クリップでは制作と並行して次のような確認を行っています。
・商標:同じ名前、あるいは似た名前が、同業種ですでに登録されていないか
・意匠・著作権:ロゴや表現が、既存のものと酷似していないか
・ライセンス:使うフォントが、商用利用できるルールになっているか
「誰がどこまで確認するか」を事前に決めておくことが、安心して運用を始めるための第一歩です。クリップでも、こうした権利関係の確認を行いながらプロジェクトを進めています。
Case Studies 制作実績
これまでに手がけたブランディングやWebサイトの制作実績をご紹介しています。
業種を問わず、コーポレートサイトからブランドサイトまで対応してきました。
世界のWebデザイン3大アワードを複数の案件で受賞しています。