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ブランディングを外部に相談してみたものの、提案がどうもしっくりこない。
そういう経験をされている方から、よくご連絡をいただきます。
この違和感は、依頼側の感覚が間違っているから起きるものではありません。
多くの場合、ブランディング会社はリサーチ結果を元に「御社のポジションはここ」と結論だけが一方通行で返ってくるような、実体から浮いた「表面的なお化粧」に終始していることが原因です。
私たちは、数名規模のスタートアップから、ステークホルダーが多岐にわたる上場企業のトータルブランディングまで、数多くの現場を「中の人」として並走してきました。その経験から確信しているのは、ブランディングの本質は「映えるデザイン」ではなく、現場の迷いを消す「軸の言語化」にあるということです。
対話を通じて自分たちの正体を問い直し、現場で使える「軸」を整える。
このプロセスを丁寧に進めることが、ブランディングを成功させる何よりの近道になります。
「軸」が曖昧だと、なぜブランドは破綻するのか
ブランドの軸が曖昧なままだと、関係者それぞれが「自分の中の正解」で物事を判断してしまい、合意形成や意思決定が止まりやすくなります。
その積み重ねによって、発信内容や物事の優先順位にもずれが生まれます。顧客から見ると、「この会社は何が強みで、何を提供してくれるのか」が曖昧になり、伝わりにくくなっていきます。結果として、ブランド全体のイメージも崩れてしまいます。
ここでいう「軸」とは、主に以下の3つです。
①誰に届けるのか(ターゲットユーザー)
②何を顧客に約束するのか(どんな価値や体験を提供するのか)
③なぜ自社なのか(他社と何が違い、何が強いのか)
この基準が定まっていないと、社内では判断の齟齬が起こります。共通認識がないまま議論が進むため、現場の判断は好みや空気に左右されやすくなります。すると、スタッフの言動や、将来を見据えた施策、社外に向けたイメージ戦略にも一貫性が出なくなってしまうのです。
だからこそ、まず必要なのは「軸」を言葉にすることです。この3つを定義するために、私たちはヒアリングではなく「対話」から始めます。正解を引き出すのではなく、現場の言葉の中に眠っている「らしさ」を一緒に掘り起こすプロセスです。
私たちはブランド戦略を「経営や事業の意思を、様々な場面で再現できる形に落とすこと」と捉えています。この再現できる状態がつくれると、「これはやるか、やらないか」「この言い方は合うか、合わないか」「この表現は強すぎるか(too much)、ちょうどよいか(better)」といった判断が、現場レベルで揃いやすくなります。
ブランド戦略の重要性が高まる背景
ブランド戦略の重要性が高まっている背景は、大きく3つあります。
① 顧客の選択肢が増え、違いが見えにくい(選択肢の過多)
似たサービスや打ち出し方が増え、比較される機会が増えています。そのため「なぜ自社なのか」という独自性をこれまで以上に明確に伝える必要があります。
② 情報が早く広がり、矛盾が見えやすい(情報の透過性)
SNSや口コミにより、発信と実態の矛盾は一瞬で広がります。効率だけを追うデジタルマーケティングだけでは、ブランドの信頼を保てない時代です。
③ 「迷い」がスピードを落とす(意思決定のスピード)
関わる人が増えるほど、判断の「軸」がないと現場の迷いは増幅します。その迷いは、会議の回数や修正量を増やし、ビジネスのスピードを確実に奪います。
こうした背景があるからこそ、まずは「軸」を揃えることがビジネスの成否を分けるのです。
定まった軸をどう伝わる形にしていくか。そのステップを考えるうえで、整理しておきたいのが「ブランディング」と「マーケティング」との違いです。
ブランディングとマーケティングとの違い
ブランディングとマーケティングは、よく混同されます。簡単に言うと、ブランディングはどこに向かうかを決める「戦略」で、マーケティングはそこへ加速させるための「施策」です。
ビジネスでは成果が求められるため、プロモーションから手をつけたくなるのは自然なことです。ただ、ブランドの方向性が先に決まっていると、同じプロモーションがより正しい方向に加速します。
私たちは単に制作物を作るだけでなく、貴社にてクリエイティブの判断ができるようになるまでの「段階的支援」を大切にしています。
よくある課題と解決策
ブランド戦略がうまく機能しない理由は様々ですが、共通しているのは「誰に・何を・なぜ自社か」が、現場で使える言葉になっていないことです。
課題①:言葉の意味や解釈が揃っていない
「信頼」「先進」「寄り添う」など、キーワードは並んでいるのに、スタッフによって指している内容の解釈が違う状態です。
【解決策】言葉を具体的な「行動基準」まで落とし込む。
言葉だけを決めるのではなく、どの場面で、誰が、どう使うかまでをセットで揃えます。言葉を具体的な「行動基準」まで落とし込み、運用の迷いをなくします。
課題②:ターゲットが広すぎて、結局誰にも刺さらない
ターゲットを「幅広い層に」としてしまうと、メッセージは薄くなり、記憶に残りません。
【解決策】ターゲットを絞るのではなく「決める」。
一番届けたい相手を明確にし、その相手にとっての優先順位で伝え方を整えます。
課題③:見た目は整っているのに、言っていることが揃わない
ロゴやサイトを整えても、営業の説明や対応がバラバラだと顧客は不安になります。
【解決策】手法(How)の前に、中身(What)を先に固める。
見せ方だけを先行させず、根っこにある「中身=ブランドの軸」を言葉として揃えます。先に軸を固めることで、あらゆる接点で言動に一貫性が生まれます。
クリップが考えるブランディングの全体像
シンボルロゴ、Webサイト、接客、商品。すべての接点で「軸」が通っていることで、顧客の中に信頼が蓄積され、最終的に「なんとなく好き」という感情(愛着)が醸成されていくのです。
機能や価格の比較(理性的な判断)ではなく、この「なんとなく好き」という情緒的な繋がりをつくること。それこそが、ブランディングが目指すべき最終的な成果だと私たちは考えています。
ブランド戦略を破綻させないポイント
ブランド戦略の本質は、経営の意思を現場の振る舞いまで「再現できる形」に落とし込むことです。私たちは、ブランディングを次の2つに分けて考えています。
Brand(What):何を伝えるべきか(目的)
経営層の想いを抽出し、10年後も揺るがない「北極星」を定義します。
ing(How):どのように伝えるか(伝達・浸透)
その軸を、ロゴ・WEB・ガイドライン、さらには社員が配るノベルティ一つに至るまで、一寸の狂いもなく具体化します。
そしてクリップがまず注力するのは、「Brand(=軸)」を言葉として揃えることです。
ここが曖昧なままing(How)だけが先行すると、発信や施策は増えても、「結局どんな価値を提供してくれる会社なのか」が揃わず、徐々にブレていきます。
フレームワークのリブランディングは実施しない
よくある定番フレームワークでのリブランディングを「した」だけにならないよう、当たり前のことを当たり前に整理し、未来を見据えたブランド開発として設計します。定番フレームワークを"当てはめるだけ"のやり方はせず、必要な整理を丁寧に行いながら本質的な支援を行います。
持続性のある体制を構築する
外注してリブランディングをして、結果的に何も成果が残らないプロジェクトを散見します。ブランディング施行後も、中期的な並走による社内への落とし込みが必要だと考えます。
外注して一度きりで終わらせるのではなく、取り組みのあとに社内への浸透・落とし込み、続けられる体制までを含めて設計します。
ここまでのブランド戦略に対する考え方を実務で再現できる形にするために、最後に「クリップのブランド戦略フロー」をご紹介します。
ブランド戦略のフロー
ブランド戦略は、「決める順番」が重要です。
思いつきで進めると議論が散らばり、「何を前提にするか」が曖昧になって先祖返りが起きてしまうからです。
そのためクリップでは、迷走を防ぎ合意形成をスムーズにするための「明確な基準」を設けています。この土台があることで、議論を最短ルートで前進させることができます。
ブランド戦略策定のフロー
①現状を整理し揃える(顧客・市場・自社の前提を揃える)
②ターゲットを決める(誰のどんな状況にターゲットを向けるか)
③約束を決める(届ける価値・体験)
④違いを決める(なぜ自社なのか)
⑤言葉にする(短く、ぶれない形に整える)
⑥「現場が迷わない」ための実装(ガイドライン・ツール化)
私たちが作るブランドガイドラインは、棚に飾るためのものではありません。「SNSの投稿でこの言葉を使っていいか?」「展示会のノベルティにこの色を使っていいか?」といった、現場の日常的な意思決定を助ける「実用的な判断基準」として機能させます。
実際に、ロゴからWEBサイト、ツール一式までを一貫した「軸」で制作した上場企業のプロジェクトにおいても、この「使い続けられる状態」をつくることこそが、ブランディングの本質だと考えています。
この「軸」を、あらゆる接点へ反映する
このフローを飛ばすと、必ず後戻りが発生します。特に根幹が曖昧なままだと、いざ現場で活用する際に判断が割れ、優先順位も場面ごとにずれていくからです。
立派な言葉をつくることが目的ではありません。大切なのは、日々の言動や提供価値にまで一貫して反映され、あらゆる顧客接点で「誰に/何を約束し/なぜ自社なのか」がブレずに機能していることです。
この「基準」があれば、議論が迷走しても「いま決めるべきこと」へ即座に立ち戻れます。社内の合意形成を最短ルートで進めるための、確かな土台になるからです。
ブランドを固めていく過程で、「どこか微妙だ」「どう進めればいいかわからない」とモヤモヤするなら、それは「決める順番」がズレているサインかもしれません。
そもそもブランディングが必要な段階なのかという根幹から、私たちクリップが「壁打ち相手」として伴走します。まだ課題が言語化できていなくても構いません。そのモヤモヤを紐解くところから、お気軽にご相談ください。
Case Studies 制作実績
これまでに手がけたブランディングやWebサイトの制作実績をご紹介しています。
業種を問わず、コーポレートサイトからブランドサイトまで対応してきました。
世界のWebデザイン3大アワードを複数の案件で受賞しています。